コレステロールは悪者ではありません


「コレステロール」という言葉は大人の方でしたら誰もが一度は耳にしたことがあるかもしれません。

では、コレステロールとはどのようなものなのか皆さんはご存知でしょうか?

コレステロールはよく『悪玉』『善玉』という言葉で表現されていますので、

・悪玉は高いと体によくない

・善玉は低いと体によくない

というイメージがついている方が多いのではないかと思います。

しかし、それは違います。

コレステロールは私たちが生きていくうえで絶対に必要なものであり、善悪はありません。


コレステロールのはたらき

コレステロールはギリシャ語の「chole=胆汁」と「sterol=個体(タンパク質)」の複合語です。

コレステロールは身体を構成するために必須の物質であります。

 

① 胆汁酸の原料…脂肪や脂溶性ビタミンの消化吸収

食べ物に含まれる脂肪(肉・魚・食用油・卵など)は十二指腸から分泌される消化酵素の「リパーゼ」により消化(乳化)されたのちに、『胆汁酸』と混ざることで小腸に送られ、効率よく吸収されます。

この『胆汁酸』の材料となるのがコレステロールなのです。

胆汁酸は脂質のほか、脂溶性ビタミンの吸収も助けますから栄養消化吸収には欠かせません。

 

つまり、脂質や脂溶性ビタミンを効率よく消化吸収するためには、胆汁酸の原料であるコレステロールが必要不可欠ということなのです。

 

② 細胞膜の原料…物質やエネルギーの出入りをスムーズに

私たちの身体を構成する約60兆個の細胞は、細胞膜におおわれており、この材料はコレステロールです。

細胞膜は細胞内部を保護したり必要な物質やエネルギーを出入りさせるという役割があります。

この細胞膜が脆弱だと、うまく栄養の交換ができなかったり、細胞を元気に保つことができない=細胞の集合体である臓器の調子が悪くなったり、肌艶が悪くなるなどに繋がります。

 

丈夫な細胞膜をつくり機能を高めるために、コレステロールは重要です。

 

 

③ 神経細胞の原料…正確な情報伝達「記憶力・集中力アップ!認知症予防」

コレステロールの4分の1は脳に存在します。そしてその大部分は神経細胞の軸索を包み保護している鞘(ミエリン鞘という)にあります。ミエリン鞘は、脳から体の各部分に神経情報が伝達されるとき、情報がほかの回路に迷うことなく正しく伝えられるような役割を果たします。

つまり、コレステロールは神経細胞の原料となり様々な情報伝達をスムーズにするために重要ということです。

 

④ ホルモンの原料…副腎皮質ホルモン、性ホルモン、ビタミンD

人間の副腎は、重量がおよそ12gの小さな臓器ですが、体内で最もコレステロールの含有率の高い臓器です。副腎は皮質と髄質に分かれており、皮質の部分で約50種類のホルモンがつくられています。副腎皮質ホルモンは抗炎症作用や糖質の代謝など生命維持に欠かせない役割を担っています。

 

また、精巣でつくられるアンドロゲン(男性ホルモン)、卵巣でつくられるエストロゲン(卵胞ホルモン)、プロゲステロン(黄体ホルモン)の原料もコレステロールです。

さらに、骨の健康や免疫力アップに欠かせないビタミンDの材料もコレステロールです。

 

コレステロールが少ないとこれらのホルモンが十分に生成されません。

結果、血糖値の乱れ➡糖尿病、骨粗しょう症、不妊症、うつなどなどに繋がりやすくなります。


卵はコレステロール上昇に影響を及ぼすのか?

コレステロールは実は食事からが20%、残りの80%は体内(肝臓)で構成されており、

血中コレステロールの数値は

 

         食材からのコレステロールとはほぼ関係ないでしょう

 

通説で「卵はコレステロールを上げるから1日1個まで」と言われていましたが、アメリカ鶏卵協会(American Egg Board)をはじめとする数々の研究結果から、鶏卵の摂取量と心臓病のリスクの関係を示す事実はない』との報告がありました*1。

 

また薬剤師・栄養学博士である宇多川久美子氏は「卵や他の食品からコレステロールを多く摂取しても、それだけで体内のコレステロールが増加するわけではない」「数々の実験が〝卵の摂取量はコレステロール値には影響しない”ことを証明しています。」*2と述べています。


 ではなぜ、コレステロールは高くなってしまうのでしょうか?

一番の原因は『炎症が起きていることで、それを修復するために沢山のコレステロールが合成されている』ということです。

 

※炎症とは:感染、病気、または怪我から自分の身を守るため免疫システム。不健康なものを食べたり、アルコールや甘い飲み物をたくさん飲んだり、運動不足などが炎症の増加と関連しています。また、トランス脂肪酸や酸化している油が入っている加工食品を食べると、炎症はさらに促進し、動脈の内側を覆う内皮細胞に損傷を与えます。

 

血管の内皮細胞が損傷すると、そのケガを修復しようとコレステロール(LDL)がくっつきます。

しかし治らずに、どんどん炎症の要因となるものを身体に入れると、修復がおいつかなくなりどんどんコレステロールがくっつきます。それが、動脈硬化の引き起こすメカニズムなのです。

 

なので、コレステロールが上がっているということは

『身体の炎症反応を示してくれるサインであり、修復しようと体が頑張っている』と捉えてほしいのです。

 

ここで安易にコレステロールを下げる薬を飲むと

炎症が修復できないので、ますます血管は弱くなり不健康になってしまうと私は思います。

 

コレステロール上昇しないように様々な良質な脂質・アミノ酸が含まれている卵を控えることよりも

コレステロールを下げる薬を飲むよりも

 

まずやるべきことは 炎症する要因を排除することなのです。


コレステロールに善悪はない

ここでよく耳にする「善玉コレステロール」と「悪玉コレステロール」についてお話します。

善玉コレステロール=体に良い、悪玉コレステロール=体に悪い というイメージがついてしまいがちですが、そうではありません。

 

名前が異なるので2種類のコレステロールが存在すると思われがちですが、体内における役割の違いで善玉と悪玉にわけられているだけで、コレステロールは1つです。

コレステロールは脂質なのですが、このままでは血液に溶けないので「リポたんぱく」という形タンパク質のカプセルに包まれた状態で血液に乗って、身体の必要な各所に運ばれていきます。

 

リポたんぱくには分子の大きさによって5種類存在するのですが、その中でも有名なのが

 

・LDL(Low Density Lipoprotein):低比重リポたんぱく(分子量が小さいリポたんぱく)。これとコレステロールが結合することで『LDLコレステロール(通称、悪玉コレステロール)となる

・HDL(High Density Lipoprotein):高比重リポたんぱく(分子量が大きいリポたんぱく)。これとコレステロールが結合することで『HDLコレステロール(通称、善玉コレステロール)となる

 

なのです。

LDLコレステロールのはたらきは、肝臓から全身の細胞にコレステロールを届ける役割を果たします。LDLコレステロールがあることによって、上記のようなコレステロールの機能が十分に発揮されます(胆汁酸の原料、細胞膜をつくる、神経細胞の原料、ホルモンの原料など)。

しかし、必要以上にコレステロールが血液中に増えてしまうと、使われずに残った血液中のコレステロールが、動脈壁に次々と入り込み、動脈硬化を起こしやすくなります。これが、LDLコレステロールが「悪玉」と呼ばれる理由です。

※厳密にいうと、活性酸素などの作用によりLDLが酸化され酸化型LDLに変性する。酸化型LDLは血管壁を傷つけ、健康な血管が本来もっている血管拡張作用を失います。酸化型LDLが血管壁に付着すると、その処理をするために白血球の1種である単球も血管壁に入り、マクロファージに変性して酸化型LDLを捕食します。そのうちに動けなくなり死んでしまいます。その死骸が『プラーク』とよばれる粥状の物質となり血管壁にこぶのようにたまることで、動脈硬化を引き起こします*6)

 

しかし、LDLが不足するとうつやアレルギー、性欲低下、胃もたれ、細胞膜の脆弱化による赤血球破壊(溶血)が起こりやすくなります*4。また、コレステロールは上述のようにタンパク質と結合して運ばれていくため、低コレステロールはタンパク質不足も意味します*4。

 

一方、HDLコレステロールのはたらきは、血管にある余分なLDLコレステロールを肝臓に戻す「回収係」のような役割を果たします。HDLコレステロールが余分なコレステロールを回収することから、動脈予防の予防に繋がります。これが、HDLコレステロールが「善玉」と呼ばれる理由です。


ですが、さきほども述べたようにコレステロールに善悪はなくあくまでも種類は1つです。

HDLとLDLが多すぎず・少なすぎずバランスよく血液中にあることがいつまでも健康で美しくあること(細胞から健康に➡その先に美しく!)に繋がります。


どのくらいが理想?

日本動脈硬化学会では、

HDLコレステロールの基準値は40~110㎎/dl、LDLコレステロールの基準値は40~119㎎/dl*3と定めています。

 

しかしLDLコレステロールが低いほど総死亡率が上昇し、100㎎/dl未満なると急上昇し、120~139ml/dlがもっとも総死亡率が低い*2というデータもあるようです。

このことから、LDLコレステロールが極端に低いことは死亡率上昇に繋がる可能性があります

 

一方、HDLは高ければよいかと言われればそうでもないようです。

現段階では、HDLコレステロールが低いことは冠動脈疾患の危険因子になることは先行研究で明らかになっていますが、HDLコレステロールが高いほど動脈硬化を抑制するという明確なエビデンスは存在していません。また、HDLコレステロールが高くても、LDLコレステロールを回収する本来の機能が発揮できていない可能性も示唆されているようです*5。(高HDLコレステロールは一般的に110mg/dl以上を言う場合が多いそうです)

 

これらのことから、

コレステロールは高いよりも低いことのほうがよっぽど危険であると捉えて良いでしょう

 


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<参考>

*1 卵の栄養機能とアンチエイジング効果 第2回 卵のコレステロール悪玉説、一般財団法人 食品分析開発センター、http://www.mac.or.jp/mail/170701/02.shtml(2020.3.1アクセス)

*2 宇多川久美子著、それでもコレステロール薬を飲みますか?、河出書房新社、2018、P22・69

*3 コレステロール摂取に関するQ&A、日本動脈硬化学会、http://www.j-athero.org/index.html(2020.3.2アクセス)

*4 宮沢賢史、医者が教える「あなたのサプリが効かない理由」、イースト・プレス、2018、P114

*5 高HDLコレステロール血症には動脈硬化抑制機能があるか?、日本医事新報社、https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=10038(2020.3.2アクセス)